2025年、医療用後発医薬品およびバイオ後続品の承認審査における「パテントリンケージ」の運用が大きく変わりました。
厚生労働省は、特許抵触の有無の確認に際し、中立的な専門家の意見を活用する「専門委員制度」を試行的に導入しました。
知財関係者の間では注目されている話題ですが、商社や原薬メーカー、調達担当者にとっては、
- そもそもパテントリンケージとは何なのか
- 2025年に何が変わったのか
- 安定供給とどのような関係があるのか
と感じる方も多いのではないでしょうか。
今回は、2025年の制度変更のポイントを整理してみたいと思います。
パテントリンケージとは?
パテントリンケージとは、後発医薬品の承認審査において、先発医薬品の特許との関係を確認する仕組みです。
もし特許を侵害した状態で後発医薬品が上市されれば、その後の訴訟や販売停止によって供給が不安定になる可能性があります。
そのため、
「販売してから問題を解決する」
のではなく、
「販売前にリスクを確認する」
という考え方に基づいて運用されています。
2025年、何が変わったのか
今回導入されたのが「専門委員制度」です。
パテントリンケージの判断において、厚生労働省の審査官だけでは特許の判断が難しいケースも多く、必要に応じて医薬品特許に関する外部専門家の意見を聴取できる制度が試行的に設けられました。
専門委員は、大学教員、弁護士、弁理士などの中から選ばれ、通常3名(最大5名)で構成されます。
先発企業と後発企業双方の見解や資料を確認し、必要に応じて追加質問を行った上で、特許抵触の有無について意見書を作成します。
その意見を参考にしながら、最終的な承認可否は厚生労働省が判断します。
なぜ専門委員制度が導入されたのか
通知の中で印象的だったのは、その目的です。
厚生労働省は、
「医薬品の安定供給を図る観点から」
専門委員制度を導入するとしています。
また、運用指針でも、
「後発医薬品の承認審査における特許抵触の有無の確認を容易にし、もって医薬品の安定供給を図ること」
を目的として掲げています。
つまり今回の制度変更は、単なる知財制度の変更ではなく、
「供給を止めないための仕組み」
という側面も持っていると言えそうです。
パテントリンケージは「裁判の代わり」ではない
ここで誤解してはいけないのは、パテントリンケージで承認されたからといって、特許侵害がないことが保証されるわけではないという点です。
また、専門委員の意見書にも法的拘束力はありません。
最終的に特許侵害の有無を判断するのは裁判所です。
したがって、
- 承認後に特許訴訟が提起される可能性がある
- 裁判所の判断が専門委員の意見と異なる可能性がある
- 専門委員が「抵触なし」と考えても、最終的に侵害が認定される可能性がある
ということになります。
パテントリンケージは特許紛争をゼロにする制度ではありません。
むしろ、
上市後の大きな混乱をできるだけ減らし、医薬品の安定供給を図るための仕組み
と理解する方が適切ではないかと思います。
商社や原薬メーカーにも関係する話
パテントリンケージというと、
「知財部門の話」
と思われがちです。
しかし、
- 開発スケジュール
- 原薬供給開始時期
- サプライヤーとの生産調整
などにも関係するため、商社や原薬メーカーにとっても無関係ではありません。
特許リスクによって上市時期が変われば、サプライチェーン全体にも影響が及ぶからです。
特許もまた、安定供給を支えている
医薬品の安定供給というと、
- 原薬不足
- 品質問題
- 災害対策
などが注目されます。
しかし、
特許紛争による供給停止もまた、安定供給上のリスクの一つです。
品質もリスク。
災害もリスク。
そして特許もリスク。
今回の専門委員制度導入は、
事後的に争うのではなく、事前にリスクを確認する方向へ、日本のパテントリンケージが一歩進んだことを示しているように感じます。
まとめ
2025年のパテントリンケージ制度変更では、専門委員制度が試行的に導入されました。
これは単なる知財制度の見直しではなく、医薬品の安定供給を支える新たな仕組みとして位置付けることができます。
品質もリスク。
災害もリスク。
そして特許もリスク。
サプライチェーン全体を考える上で、特許もまた「供給を止めないための重要な要素」として理解していく必要があるのではないでしょうか。
次回は、
「商社や原薬メーカーはパテントリンケージをどう理解すればよいのか」
について考えてみたいと思います。









