2023年から読み解く「ものづくり白書」の変化

~製造業は何を求められてきたのか~

毎年5月頃に公表される「ものづくり白書」。

製造業に携わる方でも、毎年すべてに目を通している人はそれほど多くないかもしれません。しかし、この白書には国が製造業に対して何を課題と考え、どの方向へ進もうとしているのかが色濃く表れています。

私は毎年この白書に目を通していますが、2026年版を読んで少し違和感を覚えました。

その違和感の正体を探るために、2023年版から振り返ってみました。

すると、製造業に求められるテーマが少しずつ変化してきていることが見えてきます。

今回はまず、その流れを整理してみたいと思います。

2023年 コロナ後の立て直しとDX・GX

2023年頃の製造業は、まだコロナ禍による混乱の影響を色濃く受けていました。

原材料不足、物流混乱、半導体不足。

「必要なものが必要な時に手に入らない」

という状況が続き、多くの企業がサプライチェーンの見直しを迫られていました。

同時に、脱炭素(GX)への対応やDX推進も重要なテーマとして取り上げられていました。

この頃の白書は、

「まずは変化に対応するための体制を整えよう」

というメッセージが中心だったように感じます。

2024年 レジリエンス強化へ

2024年になると、テーマはさらに一歩進みます。

ウクライナ情勢や中東情勢など、世界情勢の不安定化によって、企業はこれまで以上にリスクを意識するようになりました。

白書でも、

・サプライチェーン強靭化
・経済安全保障
・リスキリング
・人材不足への対応

といった言葉が増えてきます。

単に効率を追求するだけではなく、

「止まらない会社をつくる」

という考え方が重視されるようになりました。

2025年 経済安全保障が本格テーマに

2025年版では、経済安全保障が大きく前面に出てきます。

製造業の競争力を考える際に、

・産業競争力
・GX(脱炭素)
・経済安全保障

の3つを同時に考える必要があると示されました。

また、

DXは企業の稼ぐ力を高める重要な手段であること、企業間データ連携やサプライチェーン全体での最適化が必要であることも強調されています。

ただ、この時点ではまだ、

「何をやるべきか」

を説明している印象が強くありました。

そして2026年

ところが、2026年版は少し空気が違います。

もちろん、

・AI活用
・DX推進
・経済安全保障
・人材育成

といったテーマは引き続き重要です。

しかし、それ以上に感じたのは、

「取り組む企業」と「取り組めない企業」

の差が広がり始めていることへの危機感でした。

収益力の高い企業は積極的に投資を行い、生産性を高め、賃上げも実現している。
一方で、収益力の低い企業は投資そのものが難しくなりつつある。

白書の視点が、

「何をやるべきか」

から、

「誰ができていて、誰ができていないか」

へ移り始めたように感じました。

これは私にとって、これまでのものづくり白書との大きな違いでした。

おわりに

2023年から振り返ると、

DX → サプライチェーン強靭化 → 経済安全保障 → AI活用

という流れで議論が進んできたことが分かります。

しかし2026年版では、それらに取り組める企業と取り組めない企業の差が、少しずつ表面化し始めています。

次回は、2026年版ものづくり白書の特徴について、もう少し深掘りしてみたいと思います。

「なぜ企業間格差が広がるのか」

そして、

「白書が本当に伝えたかったメッセージは何か」

を考えてみます。