2026年版ものづくり白書が示した企業間格差

~「何をやるか」ではなく、「誰ができているか」の時代へ~

前回の記事では、2023年から2026年までのものづくり白書の変化を振り返りました。

DX、GX、サプライチェーン強靭化、経済安全保障。

製造業を取り巻く課題は年々増えていますが、2026年版を読んでいて私が最も印象に残ったのは、個々のテーマそのものではありませんでした。

それは、

「企業間格差」

です。

これまでの白書が「何をやるべきか」を示していたとすれば、2026年版は「誰が実行できているか」に焦点が移ったように感じます。

収益力の高い企業は、さらに投資している

2026年版白書では、収益力の高い企業ほど、

・省力化投資
・省人化投資
・システム投資
・増産投資

に積極的であることが示されています。

さらに、

労働生産性の高い企業ほど賃上げ率も高いという分析も掲載されています。

つまり、

投資

生産性向上

収益向上

賃上げ

人材確保

という好循環が生まれているのです。

一方で、収益力が低い企業は投資余力を確保しにくくなります。

結果として、生産性改善が進まず、人材確保も難しくなる。

この差は、今後さらに広がる可能性があります。

AI活用でも差が見え始めた

2025年版ではDX推進の重要性が語られていました。

しかし2026年版では、さらに踏み込み、

「AI・デジタル技術を経営課題の解決にどう活用するか」

へと議論が進んでいます。

興味深いのは、

地政学リスクやサプライチェーンリスクなどの経営課題への意識が高い企業ほど、AIやデジタル技術を積極的に活用しているという点です。

つまり、

AIを導入したから強い企業になるのではなく、

危機感を持っている企業ほどAIを活用している。

という見方もできます。

経済安全保障は「知っている」から「実行できるか」へ

2025年版では、

「経済安全保障という言葉は知っているが、何をすればよいかわからない」

という企業が多く存在していました。

ところが2026年版では状況が変わっています。

経済安全保障への取組企業は増加したものの、多くは情報収集段階にとどまっていることが示されています。

また、

収益力の低い企業ほど、

・調達先の多角化
・サイバーセキュリティ強化
・リスク分析

といった実践的な対策が進んでいない傾向も明らかになっています。

言い換えれば、

「知っている企業」と「実際に行動している企業」

の差が生まれているのです。

人材育成でも広がる格差

人材育成に関するデータも印象的でした。

2026年版では、

事業所規模が小さいほどOFF-JT実施率が低く、規模による差が大きいことが示されています。

また、

・新卒採用
・人材定着
・技能継承

についても、企業規模による違いが見られます。

もちろん中小企業が努力していないわけではありません。

むしろ、多くの企業が人材確保や教育に真剣に取り組んでいます。

しかし、

人材育成への投資余力

という面では、どうしても差が出やすい現実があります。

2026年版白書が本当に伝えたかったこと

今回の白書を読んでいて感じたのは、

企業規模の問題ではなく、

「準備している企業」と「準備できていない企業」

の差が広がっているということです。

AIも、
経済安全保障も、
人材育成も、

本質的には同じです。

変化を予測し、

先に手を打てる企業は強くなる。

逆に、

目の前の課題対応だけに追われる企業は、ますます余力を失っていく。

そんな構図が見えてきます。

おわりに

2026年版ものづくり白書は、

「AIを導入しましょう」

という単純なメッセージではありません。

また、

「経済安全保障に取り組みましょう」

という話だけでもありません。

私には、

「備える企業と備えられない企業の差が広がり始めている」

という警鐘のように感じられました。

では、中小企業は何から始めればよいのでしょうか。

次回は、2026年版ものづくり白書を踏まえ、

中小企業が現実的に取り組むべきことと、最初の一歩について考えてみたいと思います。