~見えないリスクをどう可視化するか~

第1回では、原薬の複数ソース化は目的ではなく、患者さんへの安定供給を支えるための手段の一つであることについて考えてみました。

また、第2回では、「何社から購入しているか」ではなく、「どのようなリスクを抱えているか」を理解することが重要ではないか、という視点から調達リスクについて考えてきました。

では、そのリスクをどのように把握し、管理していけばよいのでしょうか。

今回は、見えないリスクを可視化することについて考えてみたいと思います。


本当に知りたいのは「何社あるか」ではない

原薬の複数ソース化が進むと、

「二社購買になっている」

「三社から調達している」

ということ自体が安心材料のように感じられることがあります。

しかし、本当に知りたいのは、

「何社あるか」

ではなく、

「どのようなリスクを抱えているか」

ではないでしょうか。

重要なのは、調達先の数ではなく、サプライチェーン全体のリスク構造を理解することです。


見えないリスクを見える化する

例えば、原薬サプライチェーンには、

といったさまざまなリスクが存在します。

個々のリスクだけを見れば問題なくても、複数のリスクが重なることで、供給停止につながる可能性があります。

だからこそ、

「リスクがあるか、ないか」

ではなく、

「どのようなリスクが存在し、それがどのようにつながっているのか」

を理解することが重要になります。


リスクマップという考え方

サプライチェーンを管理する上で重要になるのが、リスクマップという考え方です。

例えば、

などを整理し、

「どこに弱点があるのか」

を見える化していきます。

すると、

「この原薬は二社購買だから安心」

ではなく、

「この原薬は上流原料依存が高いため、在庫戦略でカバーする」

「物流リスクに備えて代替ルートを準備する」

といったように、リスクに応じた対策を考えることができるようになります。


リスクをゼロにすることはできない

自然災害、地政学リスク、品質問題。

将来起こるすべてのリスクをなくすことはできません。

南海トラフ地震や首都直下地震を完全に防ぐことができないのと同じように、サプライチェーンリスクをゼロにすることも不可能です。

だからこそ重要なのは、

「リスクをなくすこと」

ではなく、

「リスクを理解し、備えること」

です。

そして、そのためには、見えないリスクを見える形にしていくことが欠かせません。


KPIを追いかける時代から、リスクを理解する時代へ

供給確保医薬品の評価は、安定供給に向けた重要な取り組みです。

評価項目もKPIも必要です。

しかし、本当に重要なのは、

「複数ソース化できているか」

「何社と契約しているか」

だけではありません。

これからの安定供給に求められるのは、

リスクを理解し、可視化し、継続的に改善していくこと

ではないでしょうか。

私は、

KPIを追いかける時代から、リスクを理解し、見える化する時代へ。

そんな変化が、確実に始まっているように感じています。


おわりに

今回、3回にわたり「供給確保医薬品の評価から考える」というテーマで考えてきました。

供給確保医薬品の評価制度は、今後さらに進化していくと思われます。

その中で重要になるのは、

評価項目を満たすことだけではなく、

患者さんへの安定供給という本来の目的を見失わないこと。

そして、

調達先の数ではなく、リスク構造を理解し、見える化し、備えること。

これこそが、これからの医薬品サプライチェーンマネジメントに求められる姿ではないでしょうか。

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