― 見えていないのは「リスク」ではなく「前提」 ―
調達リスクという言葉は、
すでに多くの現場で共有されています。
供給不安、品質トラブル、価格高騰。
「リスクがある」こと自体は、
もう誰もが分かっている状態です。
それでも、
いざ判断しようとすると話が噛み合わない。
対策を立てたはずなのに、次に進めない。
その原因は、
リスクが見えていないからではありません。
判断の前提が、揃っていないからです。
調達の会議で、よく起きていること
調達に関する議論の場で、
こんなやり取りを見かけることがあります。
・この原薬は、これまで問題なかった
・このメーカーは、長年の付き合いがある
・前任者のときも、このルートだった
どれも事実かもしれません。
しかし、それぞれが
違う前提を見て話しているとしたらどうでしょうか。
ある人は、品質を前提に話している。
ある人は、過去の実績を前提にしている。
ある人は、担当者の対応力を前提にしている。
この状態では、
同じ「調達リスク」という言葉を使っていても、
実際には別の話をしていることになります。
属人化は「判断の入口」で起きている
調達判断が属人化するのは、
最終判断の場面ではありません。
もっと手前、
**「何を見て判断するか」**という入口で起きています。
・代替先は、本当に存在しているのか
・供給は、いつまで安定しているのか
・検討を始めるべきタイミングは、今なのか
こうした前提が、
個人の経験や記憶に委ねられていると、
調達は一気に属人的になります。
そしてその属人化は、
本人が優秀であればあるほど、
表に出にくくなります。
「何とかなる」は、構造が支えていない
結果として、
「今回も何とか対応できた」
という経験が積み重なります。
しかしそれは、
仕組みが機能したのではなく、
人が頑張った結果かもしれません。
その人がいなければ、
同じ判断はできるでしょうか。
同じスピードで、動けるでしょうか。
この問いに、
自信を持って「はい」と言えない場合、
調達リスクはすでに属人化しています。
本当に必要なのは、対策ではなく整理
調達リスクへの対応というと、
新しい対策を考えがちです。
しかし多くの場合、
先に必要なのは
対策ではなく、整理です。
・どこに判断の分岐点があるのか
・何が分かっていて、何が分かっていないのか
・誰の頭の中に、どの情報があるのか
これらが整理されていなければ、
どんな対策も場当たり的になります。
調達リスクは「可視化」から始まる
調達リスクを管理するとは、
不安を増やすことではありません。
判断に必要な前提を、
チームで共有できる状態をつくることです。
それができて初めて、
属人的な判断は
組織の判断へと変わっていきます。
調達リスクが問題になるのは、
リスクがあるからではありません。
そのリスクを、
どの前提で、誰が、どう見ているのかが
共有されていないからです。
ここを整えない限り、
調達はいつまでも
「できる人」に頼り続けることになります。











