医薬品の多くは、単一の特許ではなく複数の特許で保護されていることが一般的です。
そのため「この製品は特許切れだから自由化されている」と即断するのは危険です。
本稿では、実際に市場でよくある“特許の重なり”について解説します。
◆ 代表的な重なり方の例
– 物質特許+製剤特許
– 物質特許+結晶形特許
– 製法特許+用途特許+製剤特許
– 物質特許が切れても、製剤特許と用途特許が残っている
特許の切れ方にも“順番”があり、いつ何が切れるかの全体像を把握することが重要です。
◆ 実効支配とは:商業化を止める力
仮にある成分の物質特許が切れていたとしても、
製剤特許が強固であれば、実質的にジェネリック参入が困難になります。
これを「実効支配」と呼ぶことがあります。
例:特殊なコーティングが製剤特許で守られている場合
結晶形がピュアで安定であり、他の形では実用的でない場合
◆ “自由化された”と判断するには?
1. 物質・用途・製法・製剤・結晶形など、主要特許の満了を確認
2. 延長登録が残っていないかチェック
3. 係争中の訴訟や仮処分申請の情報も参照
4. 海外市場での状況との照合(特にFDA Orange Book など)
このプロセスを丁寧に踏まなければ、商談や開発で大きなリスクを背負うことになります。
医薬品特許は、“点”ではなく“面”で理解するもの。
ひとつの特許が切れても、商業化の道が本当に開けているかは別問題なのです。
コメントを残す