これまでは触れることのなかった「医薬品の特許」について、3回に渡り、書いていきますね。
新薬をめぐる競争は、まさに「時間との戦い」です。
10年以上の歳月と莫大な投資を経て市場に送り出される医薬品。
その分、開発者に対する保護は手厚く、「再審査制度」と「特許」の2本立てで守られています。今回はその保護制度のうち「特許」に焦点を当てていきたいと思います。
医薬品には、複数の種類の特許が関係しています。
- 物質特許(成分特許):有効成分そのものを保護
- 用途特許:新しい治療対象や投与方法に対する保護
- 結晶特許:優れた性質を持つ結晶形を保護
- 製剤特許:剤形や添加物、溶出性などに関する技術を保護
- 製法特許:合成ルートや精製技術を対象にした特許
これらの特許は、「先に発見し、先に申請した者」に与えられる独占権。
つまり特許とは、知的創造への“時間の報酬”なのです。
◆ 特許期間と「特許切れ」の意味
医薬品特許の基本的な存続期間は、出願から20年間。
ただし、医薬品は審査や承認に長い時間を要するため、最大5年までの延長が認められています。
延長の有無によって、実際の満了日は最長で出願から25年先となります。
「特許切れ」とは、この独占期間が終了することを意味します。
◆ 特許切れ情報がもたらす意味
- ジェネリックメーカーにとっては “市場参入の合図”
- 商社・原薬メーカーにとっては “5〜10年先を見据えた戦略的起点”
- 製剤受託企業(CDMO)にとっては “早期顧客獲得のチャンス”
特に商社や原薬メーカーは、将来の特許切れを見据えて、製剤企業の開発ニーズを想定しながら、5〜10年先のサプライヤー候補を調査し、関係構築を進めています。
つまり、特許切れ情報は“今使うための情報”ではなく、将来の事業機会をつかむための羅針盤でもあるのです。
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