「できる人」がいる組織ほど、実は危うい(前編)

― 属人化という見えにくいリスク ―

前回は、
「備える」とは現場で何を変えることなのかを、
調達・異物・可視化という実務の視点から整理しました。

今回は、その実務を進めていく中で、
必ず浮かび上がってくるテーマについて書きます。
それが、属人化です。

属人化という言葉を使うと、
引き継ぎ不足や業務の偏りといった
ネガティブな話として語られがちです。

しかし、現場で見ている限り、
属人化の多くは怠慢ではありません。
むしろ、善意の積み重ねから生まれます。

判断が早い人。
経験が豊富な人。
トラブル対応に慣れている人。

そうした「できる人」がいることで、
組織は何度も救われてきたはずです。

問題は、その状態が
当たり前になってしまうことです。

医薬品の現場では、こんな言葉をよく耳にします。

・あの人に聞けば分かる
・最後はあの人が何とかしてくれる

これらは信頼の言葉である一方、
構造的なリスクのサインでもあります。

判断の根拠が共有されず、
考える機会が特定の人に集まり、
不在になった瞬間に、業務が止まる。

この状態は、
人の問題ではなく、構造の問題です。

属人化をなくす、という話になると、
「誰をどう変えるか」という議論になりがちです。

しかし、見るべきは人ではありません。
判断が生まれる構造です。

属人化の問題は、
「できる人がいること」ではありません。

問題なのは、
その判断に至る道筋が、
共有されていないことです。

後編では、
「属人化をなくすこと」が目的ではない理由と、
ススミルが考える
**“正しい属人化の位置”**について整理します。